<2007.6.3> ヤマト探索隊は行く
・・・晴れ・・・

”しまった あんな事言わなければ良かった”

事の起こりは そろそろ新しい時代二十一世紀に

入らんかとする 根尾西谷川においての熱い日

だった 既にその時も訪れたのは久方振りでは

有ったのだが 遠いあの日々 心臓を蹴散らして

行かんばかりの 渓の弾丸アマゴとの真剣勝負

それに遠く氷河期前を思い出すのか 何を背負い

無表情を装う岩魚 しかし年月の経過は一変した

渓相と共に多くのものを失った 乱立する砂防

堰堤の数に とどめとばかり本流を堰き止めた

大河原上流の大堰堤(今では埋ってしまったが)

西谷大河原上流今回のベースキャンプ 2007

”ああっあそこだ” 確かにあの辺は 荒瀬を走り回る大アマゴに 何度も引き摺られキリキリ舞させられた

そんな心躍る場所さえ 今は為水の一部静かな澱みと成って居る  ポチャッ 小さく波紋が広がる??

静かに視線をスライドさせると 風景の一部と同化を遂げ中程にせり出した岸の水際から 二人の若い

ルアーマンが しきりとキャスティングを繰り返している 驚かせない様に距離を詰め声を掛けた ”釣れるか?”

”はい 結構出ました” 誇らしげに足元のストリンガーを引き寄せ指し示し 五本程の尺級岩魚が姿を見せた

おおっおぅ成るほど遣るもんだ どれも良型じゃぁないか。。     ん?まてよ やたら大き目の白斑が目立つ

それも体側だけならず背中まで散りばめスリムな体形  ”こっ これはこの渓の岩魚と違う。” 記憶の中に

しかと織り込まれた根尾谷に踊る岩魚 比べ様も無い容姿を前にして 図らずも口走ってしまった 若い釣師に

不快な思いをさせる気など 毛頭なかったのに ”いったいどうしてしまったんだ この渓の岩魚は”

思えば更にこの流域から 遠ざかる発端と成った出来事だった

パシッ!

放り込んだ薪が 一度二度跳ね 徐々に炎が

立ち上って行く ああもう夜明が近いのか?

漆黒の闇が 若干青みを帯びたグレーへと変化

傍らから ザワザワと瀬音が響く 皆は寝静まり

この闇の中蠢いてるのは自分只一人 こんな

一人の時間帯が堪らなく好きだ この世界に

脚を踏み入れ 早四十年近い年月が過ぎた

この根尾の地だけを舞台にしても 多くの出会い

思い出が残り こうして夜明を迎える焚き火の

傍らには あいつにあいつ 幾等望んでも今は

語り合うことすら叶わない奴等に 自らの人生に

見切りを付け 消息を絶ってしまった奴の事も

”おおっ!やぁやぁ”と呼びかけて 闇の中から

近付いて来るようだ どれもあの頃の若いままの

生気に満ち溢れた姿で・・・・

ふっ 俺も衰えたよ 此の侭老いは進み 身体の

自由さえ侭成らなくとも どうせ此処に座ってんだ

ろうなぁ・・・・・

どうもここに来ると 失った日々と楽しかった

思い出ばかり浮かんで来るんだろう 昨夜の宴

最後まで付き合ってくれた友との会話の中で

”こんな価値共有で 垣根を越へ友に成れるって

有り難い事だよねぇ” 改めて感じさせられる今

うっすら浮き出した稜線を見上げ 大きく深呼吸

すると ”さぁ朝だぞぉ。。。”

大河原集落跡から向井谷を望む 1970年代後半

大河原上流に注ぐ下津巻谷 ようやく工事が終わり
落ち着き始めた頃の画像 1970年代後半と思われる
合流点にあの大堰堤が出来るとは当時思いもせずに

ぎゃらりぃjune03 在来種との主張 へ続く